相続放棄をすると、その放棄をした者は当該相続に関してはじめから相続人ではなかったものとみなされるため、被相続人が負っていた借金や債務から解放されます(勿論、プラスの遺産も相続できません)。
また、相続人は、相続の承認または放棄をするまで、相続財産を管理する義務を負わなければならず(民法)、相続放棄をすることによって、この相続財産の管理義務からも解放されることになります。
しかし、相続放棄したからといって直ちにこの相続財産の管理義務から免れるわけではなく、次に相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるようになるまでは、自己の財産と同一の注意をもって引き続き財産の管理を継続しなければならず、この点には注意が必要です。
何故、注意が必要なのかと言いますと、自分が相続放棄した後に次順位の相続人がいてその相続人に相続財産を引き継ぐことができれば良いのですが、次順位の相続人と連絡が取れず、相続財産の引継ぎが出来ない場合には依然として(相続放棄をした者に)相続財産の管理義務が残っているということです。
更にまずいのは、相続人全員が相続放棄をしてしまい、相続財産を引き継ぐべき相続人がいないケースです。
相続人が全員相続放棄してしまったら、次順位の相続人に引き継ぐことはできませんので、その場合に最後に相続放棄をした相続人が管理義務を免れるためには、家庭裁判所にて「相続財産管理人」を選任してもらう必要があります。
相続財産管理人に遺産を引き渡すことによって、相続放棄者は遺産義務から解放されることになるのです。
土地・建物・マンションなどの不動産を贈与する際は、贈与者(あげる方)から受贈者(もらう方)へ、所有権移転登記をする必要があります。
もしも、贈与者(所有者)の現在の住所が、登記簿上の住所と異なる場合には、贈与登記の前に住所変更(登記名義人住所変更)の登記をしなくてはなりません。
≪贈与登記に必要な書類(司法書士に依頼する場合)≫
◎不動産の登記済権利証(登記識別情報通知書)
◎贈与者の印鑑証明書
法務局へ登記申請する時点で発行後3ヶ月以内のものが必要です。
◎受贈者の住民票
◎固定資産評価証明書
不動産所在の市町村役場(東京23区では都税事務所)で取得することができます。
◎登記原因証明情報
登記をすることになった原因(売買・相続・贈与等)や当事者等を記載し、法務局に提出する書類で、司法書士が作成致します。
◎司法書士への登記委任状
司法書士が作成致します。
尚、贈与には将来の相続対策のために利用することがあり、次の3通りによる節税方法があります。
- 婚姻期間20年以上の夫から妻への居住用不動産の贈与
- 相続時精算課税制度を利用した場合の親(65才以上)から子(20才以上)への贈与
- 基礎控除額110万円の範囲内での持分贈与
ちょうど一年前くらいに「相続登記の義務化」についてご紹介しましたが、この義務化に関する不動産登記法改正の施行日が令和3年12月に閣議決定され、令和6年4月1日施行と決定されました。
従い、令和6年4月1日以降、相続登記は義務となります。
改正後の不動産登記法では、
相続人に対し「相続が開始して所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければならない」と定められているため、「不動産の所有者が死亡したこと」と、「自分が相続して不動産の所有者となったこと」の両方の事実を知った時点から3年以内に相続登記をしなければなりません。
令和6年4月1日以降、期限内に相続登記を完了しない場合には、「10万円以下の過料」が課される可能性がありますので、改正法施行後は早めに相続登記を済ませた方が良いですね。
改正不動産登記法では「相続人申告登記」という新しい制度が設けられました。
これは、不動産を相続した人が登記官(法務局)に対して「自分が不動産の相続人であること」を申告して登記してもらう制度で、この申告によって、相続登記の義務を履行したことにしてもらえます。
ただし、この制度は、「遺産分割協議が終わっていない等」の事情により、期限内に相続登記が間に合わないといったことに対応するためのものなので、申告した時点では正式な相続登記ではなく、申告後、遺産分割協議により相続人確定した日から3年以内に正式な相続登記により、土地や建物、マンションといった不動産の名義変更を完了させる必要があります。
未成年後見人とは、
親権者の死亡等の事情により未成年者に親権を持つ者がいない場合に、未成年者の代わりに、未成年者の監護養育や財産管理等の法律行為などを行う人を言います。
従い、未成年者にキチンと親権者(父母)がいる場合には、未成年後見人は選任されません。
どのような場合に未成年後見人が選任されるのかと言いますと、
代表的な例では両親が死亡した場合です。
また、両親が離婚すると、父母のどちらか一方が未成年者の親権者となりますが、その親権を持つ父母が死亡した場合にも未成年後見人が選任されるケースに該当します。
その他、虐待などにより父母が親権を喪失した場合にも、未成年者の親権者がいなくなることに該当し、未成年後見人の選任が必要となってきます。
未成年後見人は、親権者と同じ権利義務を有しており、未成年者が成人になるなど保護をする必要がなくなるまで、未成年者の身上監護と財産管理を行います。
未成年後見人の選任は次の二通りの方法があります。
- 親権者の遺言によって指定する方法
- 遺言により未成年後見人の指定がない場合に、未成年者本人またはその親族その他利害関係人が家庭裁判所に請求することにより、未成年後見人を選任してもらう方法
家庭裁判所にて未成年後見人が選任されるときは、
未成年者の年齢・心身の状態並びに生活及び財産状況・未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年者との利害関係の有無・未成年者の意見・その他の一切の事情が考慮されます。
尚、未成年後見人が選任されると、未成年者の戸籍に未成年後見人が選任されたことが記載されます。
次の場合に該当すると未成年後見人になれません。
- 未成年者
- 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
- 破産者で復権していない者
- 未成年者に対して訴訟をし、又はした者、その配偶者、その直系血族(祖父母や父母など)
- 行方の知れない者
株式の相続手続きは、相続人間で遺産分割協議を行った上(遺産分割協議書を作成した上)で、株式の発行会社に対して名義書換を請求する必要があり、法定相続分の割合にて各相続人に持分が帰属するわけではありません(相続が開始すると相続人全員の共有状態となると考えられるからです。)。
従いまして、相続財産に株式がある場合には、相続人間で遺産分割協議を行った上で株式の名義変更等を行うことが一般的です。
遺産分割協議により、株式を相続した相続人は、当該株式が上場会社であれば、当該株式を管理する信託銀行や証券代行会社の窓口にて名義変更手続きを行うことになります(口座管理されていない株券の場合は、証券保管振替機構にて手続きを行うことになります。)。
一方、非上場会社の場合には当該会社との間で直接やり取りすることとなります。